既に昨日になってしまいましたが、ともあれ、日曜日の夜、バービカン・センターにロンドン交響楽団のコンサートを聴きに行きました。
これまでにこのブログでも何度もお話していますが、イギリス、とりわけロンドンは、文化・芸術へのアクセスがとても容易なところで、今回のチケットも、一番安い席で一人10ポンドと、この交響楽団を日本で聴くならばおよそ考えられない価格でゲットです。
今回のコンサートは、若手のヴァイオリニストとしても活躍しているニコライ・ツナイダーという指揮者のロンドンデビュー公演なのですが、プログラムが、
・ニュルンベルクのマイスタージンガー
・シューマンのピアノ協奏曲
・ブラームス第4番
といったメジャーどころだったこともあり、余りクラシック音楽を聴いたことのない小鴨と行くのにはちょうどいい曲目と思ったわけです。
…こう書くと、僕がなんだかクラシック音楽に造詣が深いと思われてしまうかもしれませんが、そのようなことは口が裂けても言えません。ただ、子供の頃、群馬の高崎に住んでいて、母親が高崎を本拠地とする群馬交響楽団の定期演奏会にたびたび姉と僕とを連れて行っていたこと、その当時のコンサートマスターをされていた先生に縁あってヴァイオリンを習っていたことがあることがあって、クラシック音楽に関しては、何も分かっていないものの、そういったものが比較的身近にある環境に育ったことは間違いありません。たとい、コンサートの最後ではいつも飽きて眠り込んでいたり、練習を全くせずにレッスンのたびにヴァイオリンの先生を怒らせていたとしても(この先生のその後のご活躍を見るにつけ、何ともったいないことをしたものだと思わずにはいられません。)。
閑話休題。
ともあれ、学校の授業でしょっちゅうバービカンの駅は使っているものの、バービカン・センターには今回が初めてのこと。少し遅めにバービカンの駅についた我々は、しっかりとおしゃれした人たちがバービカン・センターに向かって歩いているのを目にしました。僕たちも、10ポンドの席でばっちり決めるのはおかしいけれど、せめてスマートカジュアルといわれる程度の服装をしておいて正解でした。
バービカン・センターの入口
ホワイエに向かう通路
ホワイエでは、既に大勢の人が、演奏会前の軽食を楽しんだりしていました。
10ポンドの客席から舞台を望む(もちろん公演前に、でもちょっとこっそりと撮影)
そもそも幅広な会場ということもあり、とてもゆったりとしていて、この席でも端っこのコントラバス以外は十分にオケを見ることができます。
で、さて、本番。
考えてみれば、このツナイダーさん、ロンドンデビュー公演にこういったプログラムを持ってくるのはとても大胆なことではないでしょうか。だって、有名な曲であるだけに、聴衆もそれなりに耳が肥えているはずだから…。
そして、僕の感想。
マイスタージンガー: ツナイダーさんにとっては、この曲は、自分自身のデビューに対するファンファーレでもあったはず。なので、最初の一振りがどう来るのかとても期待していましたが、意外とあっさりしていたかな。オケ自体も、割とあっさり、というか、僕がワーグナーに対して持っている「おどろおどろしいまでの重厚さ」は余り感じられませんでした。それは、指揮者のせいなのか、オケのせいなのか、ホールの音響/僕の席のせいなのか、それとも僕の耳が悪いのか。
シューマンのピアノ協奏曲:どんな曲か聞く前はピンと来ませんでしたが、ピアノ独奏が始まったとき、「あ、どこかで聴いたことがある」と感じました。それはきっと、子供の頃の記憶なのでしょう。
ともあれ、ピアニストの演奏に結構引き込まれました。でも、指揮自体は楽譜に忠実な感じがして、やや退屈になりかけました。でも、おそらく第2楽章と第3楽章の間なのでしょう(この曲は、これら2つの楽章が事実上つながっています。)、音が徐々にフェードアウトし、一旦完全に休符となった部分には、聴衆全員が確かにそれに引き込まれていきました。そして、その休符を経て新たな曲が始まってからは、不思議と勢いを取り戻して終わりまで持って行きました。これが指揮者の狙いならば、大成功だったと思います。
ブラ4:ツナイダーさんのパッションが一番感じられたのはこの曲でした。オケもこの曲が一番音が飛んでいたように思います。特に第3楽章と第4楽章の間は、普通よりもかなり短い間隔で入っていったのが印象的でした。きっと、第3楽章の緊張感を失うことなく第4楽章に入りたかったのでしょうね。オケも良く応えていたように思います。特に木管系とティンパニが僕にとって印象的でした。
それにしても、ワーグナーで始まりブラームスで終わるとは、有名な曲という側面以外でも興味深いです。だって、この二人、滅茶苦茶不仲だったんでしょ?曲の方向性も(僕にとっては)ぜんぜん違うように感じられるし。
そして、ツナイダーさんの指揮は、決して老獪なものとは言えませんが、僕としてはそれはむしろ好意的に受け止めています。今後彼の世界がどのように広がっていくか楽しみです。
ともあれ、久しぶりに聞いたオーケストラということもあり、とても満足して家に戻ってきたわけです。
そして、まがりなりともこういった音楽の世界に親しみを覚えるような環境を作ってくれた母にも心の中で感謝したのでした。
今日は、腰の手術をして約1か月入院していた母の退院日。
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