5代目古今亭志ん生といえば、押しも押されぬ昭和の大看板。
僕はもともと祖父や祖母の影響で上方落語に親しみを感じているのですが、志ん生の「びんぼう自慢」という本を読み、ついでに独演会のCDなどを買ってみたら、これがとても面白いんですよね。未だ上方落語びいきではあるものの、江戸落語もまた違う味わいがあっていいものだな、と思うようになりました。
で、志ん生といえば酒は欠かせないアイテムとなるわけで、「びんぼう自慢」にも、志ん生がネタで話しているのかもしれないものの、酒にまつわる色々な逸話が載っていました。その中で僕のツボにはまったのは、関東大震災の時のこと。地震が起こって志ん生が真っ先に考えたのは、「地震で酒瓶が割れてしまうのは余りにもったいない」ということで、すぐに酒屋に走ってただ酒を飲みまくり、地面が揺れているのか自分がふらふらなのかが分からなくなったとのことでした。
この気持ち、同じ酒好きの僕としてはよくわかるんですよ。真の酒飲みはかくあるべし、と妙に感心したものです。
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話は時と場所を飛び越えて、2011年4月、イギリス・ボーンマス。
土曜日、僕にとっては最後のトライアルのつもりのIELTSを受けました。
まあ細かいミスがなかったわけではありませんが、それでも自分としてそれなりに納得できる感じで、リスニング⇒リーディング⇒ライティングをこなし、お昼の1時にここまで終了。
で、最後のスピーキングは、場所を変えて行うのですが、僕の番は3時ということで、途中でちょっと食事をするには絶妙の時間です。
というわけで、上記3教科の会場とスピーキングの会場の間にある場所―家からもさして遠くないところですが―でバスを降りて日本食屋に行こうとしたら、これが何と臨時休業。しゃーないのでスペイン食堂に腰を落ち着けようとしたら、バーカウンターのおねーちゃん曰く、「お昼は食事出してないの、チップス(ここはイギリスなので、チップス=フライドポテトです)ならあるけど」とのこと。昼からチップスを大量にむさぼって胃をむかむかさせるのもしゃくなのでここもギブアップ。というわけで、イギリス食生活の頼れる味方かつ最後の切り札でもある、パブへ足を向けたのでした。
パブは、ご存知の方も多いと思いますが、昼は普通に食事もできたりもします。というわけで、この日も僕はラザニア(うーん、典型的パブ飯の1つ!)を注文しにカウンターに向かったのですが…
そこには当然、ビールやサイダーの銘柄のラベルが貼られた各種ハンドルがずらりと鎮座ましましているわけで…
(以下僕の心の会話)
天使:「まだお昼時だよ!」
悪魔:「昼のビールは背徳の味がして最高やん。それに、パブに入って俺がビールを飲んであげへんのはビールに対して失礼やし、ビールがかわいそうやろ」
天使:「酔っちゃうよ!!」
悪魔:「ハーフパイント(約300cc)くらいなら問題ないやん」
天使:「まだスピーキングがあるでしょ!!!」
悪魔:「ちょっとぐらい酔いが回った方がようしゃべれるちゅうもんや、中国語もせやったやろ?」
天使:「後悔しても知らないよ!!!!」
悪魔:「飲まん方が後悔するわ。志ん生見てみぃ。俺もここでモノホンの酒飲みにならなあかんねん」
(以下繰り返しにつき省略)
というわけで、お代を払った後の僕の左手には、お気に入り銘柄の1つ、GREENE KING IPAのハーフパイントがあったのでした。
で、その後はラザニアを食べつつ愛しのIPAちゃんを流し込んだ上で、ちょっと別用があったので中国にいる知人と30分ほど駄弁ってました(それも、日本語で)。
そうこうしているうちに程よい時間になり、立ち上がったのですが…
あ、あれ…?
何かこう、脳みそがオブラートに包まれたような感じ。
ちょっと試験前に日本語しゃべりすぎたな、とさすがに反省して、歩きながら道々試験に出てくるような内容を英語でつぶやこうとしたのですが、え、嘘?日本語と中国語しか出てこない!!
や、やばい…
うん、さすがに焦らなかったといえば嘘になります。午前の試験は、それなりに手ごたえはありましたし、スピーキングは前回も比較的いいスコアだったので自信を持って臨もうとしていたのに、ここでスカ食らうのは余りにも情けないじゃないですか!
でも、幸いなことに、本番の試験では、大きなミス(=質問が分からない、即答できずに考え込んでしまう)はありませんでした。試験官の反応も、前回と同じような感じで決して悪くありません。でも、粋な表現ができずに、ちょっとぐじゅぐじゅしてしまった箇所があったのは、おそらくIPAちゃんの残り香なのでしょう。
***
ともあれ、試験、終わりました。できるだけのことはしたので、いかなる結果でも後悔はありません。
ただ、決して志ん生のような大物になりきれない僕のような凡人には、次のような教訓を残すことになりました。
「試験中は酒を飲んだらあきまへん」
こうやって人間はまた一つ賢くなるのでしょう、うん。
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