上海にいたころ、僕は、オフィスに常時7,8種類の中国茶を常備していました。鉄観音、西湖龍井、蛾眉毛峰、プーアル、祁門(キーマン)、などなど。
で、僕が事務所に出社すると、スタッフが早速やってきて「先生, 今天你喝什么茶?(今日はどのお茶にしますか?)」と尋ねるのが毎朝の恒例行事でした。…いや、今では日本では女性スタッフにお茶汲みさせるのは色々問題があるようですが、うちのスタッフは、完全な好意でやってくれてました。逆に自分で入れたりしていると、「私がやりますよ~、させるのは申し訳ないです」というくらい。なので、彼女らにはいつも感謝、感謝でした。ほんと、仕事でいろいろあったことを除けば、いいオフィスだったな、と改めて懐かしく思います。
で、上海離任時、スタッフたちが僕のために送別会をやってくれて、そのときにくれたのが西湖龍井。曰く、「イギリスでは中国茶が手に入らないでしょうから、お茶好きなあなたにはつらいでしょう」とのこと。西湖龍井クラスとなれば、決して安いものではないはずなのですが、それでもこうやって気を利かせてくれた同僚たちに、本当にありがたく思ったものです。
そして、イギリスに来てはや8か月目。ここは紅茶の国ということもあり、紅茶もかなりの割合で飲んでいますが、それでもやっぱり飲みなれたお茶の方がなんだかほっとする、というのは致し方ないところで、件の西湖龍井もいいペースで飲んでいます。西湖龍井は、中国の緑茶の中で僕が一番好きな種類ですしね。
で、ある日も同じように上機嫌で西湖龍井の缶から茶葉をコップに入れてお湯を注ぎ、春に萌え出でた若葉のような香りを楽しんでいた…
…のですが…
まだ沈みきっていない茶葉と共に、何か黒い塊を発見!扁平で、1センチ弱、ところどころひびが入っているかのように白い部分も見えています。
何!これゴキブリの子?!、とかなりびびりましたよ。なにせゴキブリは、子供のころにこいつが僕に向かって飛んできて以来のトラウマですから。
でも、手にとってよーく見てみると、これがまあスイカの種。
おそらくお茶を煎っていたおっさんがスイカでも食べていたのでしょう。で、種を吐き出す場所をちょっとミスったのでしょう。そう、杭州の龍井村でも見ましたが、お茶を煎る作業は、大体農家の軒先で各家がやるものなので、まあ、こういった「事故」が起こりうることも全く不自然じゃないわけで。
このような事態に直面したとしても、当方、中国に合計6年近く住んでおり、ちょっとやそっとの「食品事故」にはめげるものではありません(むしろ、今の都会の中国人のほうがこの点によりナーバスなくらいです)。いままでも、おばちゃんの指が漬かった熱々の麺や、ごく小さい羽虫が1匹浮かんだワンタンなどもめげずに食してきました。ただ、今回は、なぜかどうしても龍井村の農家のおっさんの顔が頭に浮かんでしまい、「加熱殺菌され、かつ、乾燥しているので問題はない」とは分かっていても、さすがにその時入れた茶葉はコップから捨ててしまいました。あーもったいない。
でもでも、まだ残っている茶葉にはなーんにも罪がありませんので、今も僕の横には西湖龍井がかぐわしい湯気を立てています。
さあ、スタッフの心意気を感じながらいただきましょう…。
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