今日は、気晴らしにカウンターテナーにまつわるつれづれを。
カウンターテナーという男声パートは、日本では米良美一が「もののけ姫」を歌って一躍有名になったので、「ああ、あれね!」とピンと来る方も多いことでしょう。で、これを使えば、女声のアルトに対応する声域が出せるという、至って便利なものなのですが、合唱の世界でなかなかメジャーな地位が得られないのは、いささか残念なことです(特に日本では、いわゆる「典型的な」男声合唱の曲や声にはカウンターテナーの音が合わないからなのかもしれません。これはあくまでも憶測ですが。)。
ところがどっこい、僕が大学生のころに入っていた男声合唱団では、団員はそれぞれ実声パートで4声いずれかの「本籍」を持ちつつ、カウンターテナー対応可な団員については、それを必要とする曲(例えばミサとか)のときにカウンターテナーを歌う、というシステムがあったんですよね。で、僕も一時期カウンターテナーをやったことがありました。
まあ、この声、僕にとってはやっぱり実声とは違う難しさがあったような気がしましたね。僕の発声方法が悪かったのでしょうが、例えば夏合宿で連日10時間近く練習するなんてことがあった場合には、カウンター声は数日で簡単につぶれてしまったりするんですよ。その上、音域に合わせて胸声や頭声をより意識して使い分ける必要が(僕には)あって、その方法論などを先輩から教えてもらったり、また、仲間と情報共有したりしたものでした。で、「頭のてっぺんの髪の毛3本を真上に引っ張る感覚」の発声でEs辺りの音がするっと出せたときの快感ってのは格別なものでした。
カウンターの音域は、普通は大体EsやEまでかな。遊びでクレマン・ジャヌカンのあるシャンソン(「女のおしゃべり」っていう下ネタ満載の面白い歌です。シャンソンとはいっても、三輪明宏が歌うようなやつじゃなくって、小気味のいい合唱曲です。)を歌ったときにFまで出す必要がありましたが、これはきつかったですね。おそらくちゃんとした発声にはならなかったと思います。まあ、これはあくまでも「遊び」だったからよしとして。
あと、僕の問題は、実声パートがトップテナーだったこと。だから、カウンターで出すべき低めの音は、僕にとってはもともと実声で対応可能なものなんです。なので、ファルセットを下まで出せるようにするのと同時に、実声からファルセットへの移行を自然にする方法などを自分で探したりしたっけ。
でもねぇ、大学卒業以後は、カラオケ行ったときのネタで「もののけ姫」や「天城越え」をやるときくらいしか使わなくなりました。それ自体のウケは決して悪くなかったのですが、そのおかげか逆に必ずそれを歌わされることが多くなったりして、僕は、すっかりカラオケ嫌いになってしまいました。で、歌うとしてもマイクのエコーなどを使ってごまかすような声を出していたこともあり、今では発声もすっかりさび付いちゃいました。大学のころ感じた「頭のてっぺんの髪の毛3本を真上に引っ張る感覚」などどこにもありゃしません。せいぜいその辺りの毛100本位をあちこちに引っ張られるような声かな。何かのども詰まっているような感覚もあるし。
まあ、もはやまともに出せることもなくなったカウンターテナーですが、聞くのはやっぱり懐かしくもあり、また楽しいものです。おまけにここイギリスは、カウンターテナーの歴史を細々と伝えてきて20世紀に復興させた国。きっとどこかでカウンターテナーを使った演奏会などやっているはずなのですけどね、僕が探すのに不精気味で。でも、機会を見つけて聴きに行きたいなぁ、本場のカウンターテナーを。
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