なので、KFCはもとより、焼鳥も大好きで、なぜか焼鳥屋がとても多かった松山では、友達と定期的に焼鳥屋巡りをしたりしたものです。
とはいいつつ、僕自身に特段「○○の鶏肉に限るね、フフン」といったスノッブなこだわりがあるわけではありません。まあ、ごくたまーに比内地鶏とか名古屋コーチンとかを食べたら、「うん、なるほど、確かに旨い」ってことは分かりますし、それはそれで満足度が高いのですが、普通に売られているブロイラーでも、いちいちその味をくさすことはめったにありません。まあ、ストライクゾーンが広いといえばそうなのかもしれません。
翻って小鴨は、特に四川に比内地鶏のようなブランド鶏があるわけではないと思うのですが、「土鶏」という、まあ言ってみれば養鶏場の密集した環境で育てられていないような鶏がお好みです(というより、むしろ、「臭み」が嫌いなようです。)。まあ、僕と比べてストライクゾーンが狭いということにしておきましょう。
ともあれ、これまで食べた中で僕として「これはおいしい!」と思った鶏を3つ挙げろといわれれば、次のとおりになるでしょう。写真がないのはごめんなさい。
1 愛媛の旧肱川町(現在の大洲市)にある「ふかせ」の鶏
これは、松山時代の最後に上司に連れて行ってもらったのですが、愛媛有数の清流の肱川を臨む和風家屋の囲炉裏端で炭火で焼いて食べる地鶏の味は、旨みといい、歯ごたえといい、もう格別!僕の経験した限りでは、日本ではベストかな。
…この店、まだあるのかなぁ?
2 安徽省の西逓村の民宿で食べた烏骨鶏スープ
西逓村とは、黄山の近くにある、その街並みが世界遺産に指定されている古い村です。上海時代、この村にある民宿に泊まったのですが、その民宿のおやじさんが「120元出してくれるなら家族のために特別に育ててきた烏骨鶏を料理してあげる」といわれて作ってもらったものです。当然家で放し飼いの「土鶏」です。
そのスープたるや、これまで食べたことのない力強さ!!小鴨も僕も、鶏肉でこんな味があるものかとびっくり仰天でした。肉も噛み応え・旨みともに申し分なく、僕の経験上、中国での鶏の中ではこれが文句なしのベストワン。
3 海南省三亜の文昌鶏
ある年の国慶節休みにかの春秋航空で三亜に行ったときに、噂を聞いてやってきたお世辞にもきれいとはいえない食堂で食べたものです。注文すると、鶏が一羽丸ごと入ったアルミ製の無愛想な鍋が運ばれてきて、テーブルの上にあるコンロにドスンとセットされます。でも、味の方はなかなかすばらしく、88元という(中国の単品料理にしては)高額な料理ではあるものの、二人ではそれだけでもう十分で、上記の安徽省の烏骨鶏以来の満足度の高いスープでした。
いや、前置きが長くなりましたが、ここからが本題。
ヌーシャテル滞在中の26日、E嬢は自宅から車で10分ほどのところにある両親の家での親族一同での食事会に小鴨と僕を招待しました。E嬢の家族は、それぞれが自分の言いたいことをひたすら言い合うとてもにぎやかな家族で(その点では、小鴨の親族たちと似ているところもあるなあ、と思いました。)、完全な客人の我々に対しても熱烈歓迎モードです。いい意味でのフランスの田舎の普通の家族の雰囲気って感じかな。で、もちろん向こうはフランス語ですので、折に触れてE嬢の通訳が必要になるのですが、それでもいろいろ楽しく話をすることができました(僕も、向こうの会話の中で聞き取れたフランス語をキャッチして話に加わったりして、何気にフランス語のリスニングのいい練習だなと思いました。)。
で、そのときのメインディッシュが、鶏肉料理だったのです。
この鶏肉料理、僕がE嬢の甥のミカエル君(4歳)に電車ごっこのような形で家中延々振り回されている間に作られていました。
ミカエル君に振り回されるMimakiirihikoの図
E嬢のお母さんの写真と共に。
味付けは割とシンプルで、下味はバター、岩塩。これにエシャロット+ローズマリーやタイムといったハーブ類を加えただけ。これにジュラ産の白ワインをかけてオーブンで焼くこと30分。5分ごとにひっくり返して肉を白ワインになじませていました。
出来上がりの図。付け合せはポテトです。素朴な盛り付けがまた親しみを覚えさせます。
で、味の方なのですが、この地方共通の塩味の強い味付けではあるものの、鶏肉の味自体は見事の一言。むしろ塩味ベースであるがゆえに鶏肉の味が前面に出てきます。それでも、臭みは全くなく、肉自体の味わいは申し分ありません。肉の臭みにうるさい小鴨もこの鶏肉については絶賛を惜しみませんでした。
…そして、食べているときにE嬢のお母さんがこんなことを言いました。
「この鶏は、私の故郷(=フランス)特産のものでね、唯一鶏肉でAOC(※)が適用されているものなの。私の故郷では、鶏を良く食べるので、『この地方の人の体は鶏肉でできている』なんていうのよ。」
(※ご存知の方も多いと思いますが、念のために説明すると、AOCとは、「原産地統制呼称」というべきもので、つまり、厳しい条件をクリアしたものに限りその土地の産物と名乗ることができる、品質保証認証制度のことです。ワインやチーズなどでは良く見られますよね。例えば、ワインのボトルに、Appellation ○○(地名) Controleeって書かれているものがあるでしょ。あれです。)
そのときは、ゑゑっ!鶏肉にもAOCがあるの?という驚きとともに、AOCチキンならば、その味もむべなるかな、というところで留まっておりました。
でも、無知とは恐ろしいもので…
今、ネットでAOCチキンについて調べてみたら、果たしてE嬢ママのおっしゃるとおり、AOC指定されているチキンは世界でただ一つで、その名もブレス鶏(Poule de Bresse)! なんでもミシュランレストランでも提供されるレベルのフランス最高級ニワトリというではありませんか!で、更に調べてみると、仮に日本で買うとなれば、一匹(約1.5キロ)6000円以上!ちなみに、わが実家の近所のスーパーの新春初売り広告(今はこういったのもネットで見られるのがすごいですね!)では、青森産桜姫鶏のモモ肉が100グラム99円。つまり、ブレス鶏は青森産鶏の4倍以上する代物だったのです。
今回は、人数も多かったこともあり、E嬢のお母さんは、上の写真のとおり2羽焼いていました。日本で買うより安いのでしょうが、今更ながらE嬢の実家の皆さんに改めて申し訳なく、また、ありがたく思ったのでした。
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