LCC。ご存知の方も多いと思いますが、Low Cost Carrier(格安航空会社)のことです。
というわけで、今回は飛行機のお話。
先月のヨーロッパ旅行の最後は、ピサからボーンマスまでのフライト。で、キャリアは、以前お話したように、「LCCの中のLCC」ともいうべきライアンエアーだったのでした。
いやはや、「人間を飛行機で運ぶこと」以外はなんでも別料金なことは、予約の段階から十分すぎるほど分かっていたんですが、それ以外でもすごいと思ったのは、完全自由席で、かつ、搭乗は飛行機の前後2箇所(いや、ジャンボ機のように前2つではないんです!)からで、もちろんボーディングブリッジのような金のかかるものは使いません。加えて、「定時運行したいから早く乗り込んでください!」と客に催促するに至っては、今まで僕が持っていた航空会社のサービスの概念を見事に打ち破ってくれました。
…でも、結論からすれば、僕はライアンは十分許容範囲内だな、と思いました。2,3時間のフライトならば。その程度ならば、大体離陸してちょっと一眠りすればついてしまうので、途中のサービスは特に必要ありませんし、エンターテインメントにしても、自分で本なりiPodなりもってくればいいわけですからね。
で、ボーンマスには定刻(やや早め)に到着したのですが、その時機内にファンファーレが鳴り渡り、「ライアンエアーは今回も定時運行に成功しました!」とか何とかいうアナウンス(もちろん録音済みのもの)が流れました。もちろんみんながウケたことは言うまでもありません。こういうユーモアある「演出」は、日本の航空会社では余り考えにくいかなぁ。
翻って日本では、だいぶ昔ですが、大阪から札幌までスカイマークに乗ったことがあります。まあ、日本的にはこれもLCCの類になるのでしょうが、ライアンの徹底振りから比べると、まだ甘いんじゃないかな、と思います。まあ、あの徹底振りは、確かに日本人の気性には合わないと言えばそうかもしれませんが。ただ、やたら狭かったこと(感覚的には今回のライアンよりも狭かったような気すらします。)だけは、強い印象として残っています。
そうそう、中国でもLCC乗りましたよ、最近茨城空港にも顔を出すようになった春秋航空。国慶節の時に、上海から海南島の三亜まで往復利用しました。片道約3時間ちょい?のフライトです。
少なくとも僕のLCC体験の中では、あえてこれをワーストに挙げましょう。だって、「うるさい」、「意味もなく臭う」、「狭い」、「決して安いとはいえない」、「発券システムが面倒」なんですから!
うん、これだけじゃあ妙な偏見を生んでも困るので、具体的に説明しましょう。
(1) うるさい
これ、普通の中国のキャリアなら、「客がうるさい」という意味になるのでしょうが(特に春節前の飛行機に顕著…これはこれでうんざりですが)、春秋の場合には、これが「乗務員がうるさい」ということになります。
何でか、というと、離陸後しばらくすると、フライトアテンダント(FA)が観光バスよろしく前方でマイクを持って、協賛会社の商品やオリジナルグッズを1つ1つ、テレビショッピング風に紹介するんですよ。それも時間を問わず。僕が乗ったのは、上海発夜の10時過ぎ、三亜着深夜2時ころ、というナイトフライトですが、こちらとしては機内で少しでも寝たいのに眠れない(眠らせてくれない)んです。
…想像してみてください。真夜中眠いのに、ジャパネットたかたのスタジオに閉じ込められて、煌々と光る電気の下、高田社長のセールストークを強制的に延々聞かされることを…。まだ高田社長の方がトークはずっとうまいので聞きたくなるかもしれませんが、FAにそれほどの技量などあるわけもなく…。ほんと、拷問です。
(2) 意味もなく臭う
これ、普通の中国のキャリアなら、「シートが臭う」、とか、「何日間か髪を洗っていなさそうなおっさんが近くに座っている」ということを意味するのでしょうが、春秋の場合には、「FAが売りに来る食べ物が臭う」ということになります。
機内では、食べ物は当然有料なわけですが、食にうるさい中国人のニーズに応えるべく、ほかほかのセットミールとか煮物(豆腐とか、鳥の足(もみじ)とか)がFAの押すワゴンで行き交うわけです。で、こういった食べ物には、往々にして八角とかの中国独特の香辛料が使われてますので、まあ、飛行機という機密性高い空間の中に、中国語でいう「五香味」(+α)が充満するわけです。
で、僕自身、決して中国独特の香辛料が嫌いなわけではない(むしろ好き)なのですが、飛行機の中でまで執拗に嗅ぎたいものでもありません。これにも僕はうんざりでした。
(3) 狭い
LCCの座席が狭いことはどこも共通なのですが、春秋の狭さたるや、ライアンやスカイマークの非じゃないように感じるのは気のせいなのでしょうか・・・?
(4) 決して安くない
春秋は、確かに時々びっくりするくらい安い値段を出すこともありますが、春節や国慶節のような書き入れ時には、ほとんど値段を下げません。主要なキャリアよりも気持ち安い程度。一方、主要キャリアも、場合によっては6割引とか半額とかのチケットが出ることもありますので、上記の不便を受け入れてまで春秋を選ぶインセンティブが、少なくとも僕においては働きません。かつての僕の上海事務所のスタッフも、一度春秋に乗った後、「もうおそらく2度と乗らないと思います」と言っていたことを思い出します。
(5) 発券システムが面倒
これは今はよりe-ticketの普及で改善されているのかもしれませんが、僕が乗ったころ(2008年)は、いわゆるIATAのシステムでの発券がなされないため、わざわざ春秋旅行社(春秋航空は、春秋旅行社という旅行代理店のグループ会社です。)のオフィスに行って発券してもらいました。それも、手続の不備があったようで、妙に時間がかかったことを覚えています。
…という具合なわけで、何かがない限り僕が再び春秋航空に乗ることはおそらくないとは思うのですが、それでも、中国では、今でも高い人気があるようです。上でお話したように、旅行代理店と一体になっているので、旅行社が企画するツアーに組み込むことが可能ということもあるのでしょうが、やっぱり1元でも安いのは魅力的、というのは否定しがたい事実なわけで。
ともあれ、ヨーロッパに住んでいる限りは、またいつかLCCのお世話になることもあるでしょう。
でも、最低限、安全だけには気をつけてほしいですよね!