ちょうど24時間前、僕らはロンドンを後にしました。
ヒースローでは、エミレーツ航空の今まで経験したことがないほどの手荷物重量の厳しさにやられてしまい、空港で更に荷物を捨てたり、見送りに来てくれたE嬢夫妻にあげたりと大騒ぎだったのですが、とにもかくにもドバイ行きEK004便に乗り込みました。
EK004便はかの総二階建てのエアバスA380。でも、機内はいくつかの区画(Zone)に分かれていて、1つのZone自体はそんなに大きい印象を与えないのですが、それでも、飛行機が加速を始めて離陸をする時のゆったりした感じ(というか「よっこらしょ」という感じは、ここ2年ヨーロッパでの移動でお世話になっていたエアバスの短通路型の飛行機の必死にギュイ~ンと上昇する感覚とは全く違います。たまにゃこんな飛行機も悪くないな、と思ったわけです。
でも、機内では、なぜか寝ることが出来ず、そうだな、1時間半ほどうとうとしたくらいかな。
飛行機は、ロンドン→パリの北→ブリュッセル→プラハの近く→アナトリア半島→バグダッド→バスラと飛び、朝の6時半、ドバイに到着。7時間弱のフライトなので、ちょうど日本からシンガポールに行く距離のようなものです。そう考えればイギリスと中東、かなり近いですよね。意外とびっくり。
===
さて、今回ドバイに寄ったのは、たまたま日本に買える片道切符が一番安かったのがドバイ経由のエミレーツ便だったことに加え、ただ乗換えだけじゃ面白くないのでストップオーバーをしてみようという、全くの偶然の産物です。それでも、留学の最後はちょっとゴージャスに決めようと思い、思い切って5つ星のホテルを取りました(ま、ドバイにゃ7つ星もありますけどね。ちなみに、その宿泊代を今回の飛行機の料金にプラスしても、ロンドン―東京直行便片道二人分の料金よりも安かったはず。)。その名もラッフルズ・ドバイ。シンガポール・スリングで有名なシンガポールのあのホテルのドバイ支店です。
以前シンガポールに行った時、ラッフルズ(のおみやげ物屋)に寄ったのですが、その風格を目の当たりにして、「いつかはこのホテルに見合う自分になりたい」と思ったものでした。もちろん経済力も含めてね。
それから数年。決してそのような風格に見合うだけの自分になったとはいえないのですが、英国での生活を経て、また、物理的にも少し齢を取り、加えて、シンガポールのそれよりも宿泊料金が安かったこともあり、一度このホテルに泊まってみよう、ということにしたわけです。で、予約は、僕が論文やら試験やらでばたばたしたこともあり、小鴨が手配しました(もちろん料金については僕の決裁事項でね。)。
…で、僕らがグランド・フロアに入ると、どうも小鴨が手配したそれはなんちゃらクラブとかいうエグゼクティブ向けのものだったらしく、丁重に10階に通されると、寝不足で疲れた顔をしている二人にはそれはそれは丁寧なチェックイン手続+専従のバトラーによる部屋の説明がありました。ヨーロッパでは、B&B的旅行をし続けてきた我々にとってはややお尻がむずがゆくなるような丁寧さと快適さではありましたが、こういう雰囲気の場数を踏むこともまた人生において必要だ、なんてことを言い合う貧乏性の二人なのでした。
それでも、英語が少しは出来るようになった甲斐は、こういった場所でも感じることができます。というのも、相手の英語での応対にこちらもそれなりに自然なコミュニケーションができるという「安心感」が、こういうハイソなシチュエーションでも決して怖気づかない度胸のようなものを与えてくれたような気がするから。
でもね、ホテルも含め「高級」であるってのは、案外不自由だな、って思いました。それは、こんな話。
夕方外出して夕食を食べようと思い、1階のコンシェルジュに「どこかいい店はないか」と聞いたのです。これは、僕らがヨーロッパで得た経験の1つで、宿の人に近所の安くてうまい店を聞くと、彼らが紹介するそれらは余り間違いがなかったのです。というわけで、そうすることが習慣になっていたのです。
果たして、ラッフルズのコンシェルジュはいろいろと店の名前を挙げてくれたのですが、いずれも高級感+いい雰囲気の店ばっかりで、僕らが求めているような店ではありません。なので、僕は、「僕らが一番重要なのは味であって、雰囲気や高級感はあまり重要視していない。そういったレストランでお勧めのところはないか」と聞いたら、コンシェルジュのガブリエルさん(おそらく本名はジブリールさんなんでしょうね。)は困った表情を浮かべ、
「当ホテルは5つ星ホテルでございますので、お客様にご紹介するべきレストランも相応のものとならざるを得ないのです」
なんてことを言うのです。ほんとはガブさんにだって自分のお気に入りの店とか絶対あるはずなのに。ま、こんなリクエストをする客などはまずいないかもしれないのだけど。
で、結局ガブさんが勧めてくれたある別の5つ星ホテルの最上階っぽいところにあるレストランに行ったのですが、そのホテル自体上海にもあるアメリカ系ホテルチェーンで、レストランの雰囲気は上海のそのホテルの56階か何かにあるイタリア料理屋のような雰囲気と変わりません。加えて食事はブッフェスタイル。味は決してまずいわけではないのですが、僕らが今までヨーロッパ旅行で経験した「感動」からははるかに遠いものでした。うん、これならどこでもあるよね、って。
ちなみに、そのホテルには、ラッフルズのベルボーイが手配してくれたハイヤー(メータータクシーじゃないんですよ!)で向かうという、日本でもしたことがない贅沢さ。これも貧乏性の二人にはお尻がむず痒くなる所業ですが、まあ、今回くらいバブリーでもいいじゃんと互いを慰めます。でも、この運ちゃん自体はなかなか気さくな人で、そのホテルの近くにある市場を指してこんなことを言ったのです。
「これは魚市場だよ。カタール辺りからのお客にどこかうまいところはないか、と聞かれたら、俺はよくここを紹介してるよ。ここでは魚を買ってどう料理するかを指示して食べることができるんだ♪」
とのたまうではありませんか! 運ちゃんも英語がやや怪しいので、僕らの質問の趣旨を聞き間違えているかもしれないのですが、もし運ちゃんの言うことが正しければ、我々の求めているものはむしろそういうものであったわけで…。
で、(コストパフォーマンスを含めて)不満の残る夕食を終えてその周りの下町っぽいところをふらふらした後ホテルに帰ったのですが、タクシーがなかなか捕まらなかったこともあり、最近出来たばっかりでピカピカの、でも客がいなくておそらく赤字必至の(でもそんなのこの国では関係ないんでしょうね。)地下鉄に乗りホテルに戻りました。でも、この種のホテルに泊まる客なんてそもそも公共交通機関など使わないんでしょう。そういえば、チェックインのときも、「そういえばこの近くにも鉄道の駅がありますよね。それで行けば安くなるんじゃないですか?」と僕が言ったら応対していたホテルの人が「あんた、そんなのに乗るの?」って感じでびっくりしたような顔をして、「乗り換えなどもあったりして面倒なので、タクシーの方が便利ですよ。」と言ったのが印象的でした。ともあれ、全身に汗かいてホテルに戻ってくると、クーラーがしっかり効いたロビーではみんな涼しげな顔で歓談しています。豪華かつ居心地のよい部屋に戻ると、ふんだんに使い放題の真水のホットシャワーで汗を流し…。
今日に限って言えば、ドバイの印象は、どこか「伸び行く中国の最先端都市」を髣髴とさせるようなものでした。そしてふと思わずにはいられなかったこと。
「豊かさ」とは何だろう?
…この都市であと48時間ほど考えてみようと思います。
ヒースローでは、エミレーツ航空の今まで経験したことがないほどの手荷物重量の厳しさにやられてしまい、空港で更に荷物を捨てたり、見送りに来てくれたE嬢夫妻にあげたりと大騒ぎだったのですが、とにもかくにもドバイ行きEK004便に乗り込みました。
EK004便はかの総二階建てのエアバスA380。でも、機内はいくつかの区画(Zone)に分かれていて、1つのZone自体はそんなに大きい印象を与えないのですが、それでも、飛行機が加速を始めて離陸をする時のゆったりした感じ(というか「よっこらしょ」という感じは、ここ2年ヨーロッパでの移動でお世話になっていたエアバスの短通路型の飛行機の必死にギュイ~ンと上昇する感覚とは全く違います。たまにゃこんな飛行機も悪くないな、と思ったわけです。
でも、機内では、なぜか寝ることが出来ず、そうだな、1時間半ほどうとうとしたくらいかな。
飛行機は、ロンドン→パリの北→ブリュッセル→プラハの近く→アナトリア半島→バグダッド→バスラと飛び、朝の6時半、ドバイに到着。7時間弱のフライトなので、ちょうど日本からシンガポールに行く距離のようなものです。そう考えればイギリスと中東、かなり近いですよね。意外とびっくり。
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さて、今回ドバイに寄ったのは、たまたま日本に買える片道切符が一番安かったのがドバイ経由のエミレーツ便だったことに加え、ただ乗換えだけじゃ面白くないのでストップオーバーをしてみようという、全くの偶然の産物です。それでも、留学の最後はちょっとゴージャスに決めようと思い、思い切って5つ星のホテルを取りました(ま、ドバイにゃ7つ星もありますけどね。ちなみに、その宿泊代を今回の飛行機の料金にプラスしても、ロンドン―東京直行便片道二人分の料金よりも安かったはず。)。その名もラッフルズ・ドバイ。シンガポール・スリングで有名なシンガポールのあのホテルのドバイ支店です。
以前シンガポールに行った時、ラッフルズ(のおみやげ物屋)に寄ったのですが、その風格を目の当たりにして、「いつかはこのホテルに見合う自分になりたい」と思ったものでした。もちろん経済力も含めてね。
それから数年。決してそのような風格に見合うだけの自分になったとはいえないのですが、英国での生活を経て、また、物理的にも少し齢を取り、加えて、シンガポールのそれよりも宿泊料金が安かったこともあり、一度このホテルに泊まってみよう、ということにしたわけです。で、予約は、僕が論文やら試験やらでばたばたしたこともあり、小鴨が手配しました(もちろん料金については僕の決裁事項でね。)。
…で、僕らがグランド・フロアに入ると、どうも小鴨が手配したそれはなんちゃらクラブとかいうエグゼクティブ向けのものだったらしく、丁重に10階に通されると、寝不足で疲れた顔をしている二人にはそれはそれは丁寧なチェックイン手続+専従のバトラーによる部屋の説明がありました。ヨーロッパでは、B&B的旅行をし続けてきた我々にとってはややお尻がむずがゆくなるような丁寧さと快適さではありましたが、こういう雰囲気の場数を踏むこともまた人生において必要だ、なんてことを言い合う貧乏性の二人なのでした。
それでも、英語が少しは出来るようになった甲斐は、こういった場所でも感じることができます。というのも、相手の英語での応対にこちらもそれなりに自然なコミュニケーションができるという「安心感」が、こういうハイソなシチュエーションでも決して怖気づかない度胸のようなものを与えてくれたような気がするから。
でもね、ホテルも含め「高級」であるってのは、案外不自由だな、って思いました。それは、こんな話。
夕方外出して夕食を食べようと思い、1階のコンシェルジュに「どこかいい店はないか」と聞いたのです。これは、僕らがヨーロッパで得た経験の1つで、宿の人に近所の安くてうまい店を聞くと、彼らが紹介するそれらは余り間違いがなかったのです。というわけで、そうすることが習慣になっていたのです。
果たして、ラッフルズのコンシェルジュはいろいろと店の名前を挙げてくれたのですが、いずれも高級感+いい雰囲気の店ばっかりで、僕らが求めているような店ではありません。なので、僕は、「僕らが一番重要なのは味であって、雰囲気や高級感はあまり重要視していない。そういったレストランでお勧めのところはないか」と聞いたら、コンシェルジュのガブリエルさん(おそらく本名はジブリールさんなんでしょうね。)は困った表情を浮かべ、
「当ホテルは5つ星ホテルでございますので、お客様にご紹介するべきレストランも相応のものとならざるを得ないのです」
なんてことを言うのです。ほんとはガブさんにだって自分のお気に入りの店とか絶対あるはずなのに。ま、こんなリクエストをする客などはまずいないかもしれないのだけど。
で、結局ガブさんが勧めてくれたある別の5つ星ホテルの最上階っぽいところにあるレストランに行ったのですが、そのホテル自体上海にもあるアメリカ系ホテルチェーンで、レストランの雰囲気は上海のそのホテルの56階か何かにあるイタリア料理屋のような雰囲気と変わりません。加えて食事はブッフェスタイル。味は決してまずいわけではないのですが、僕らが今までヨーロッパ旅行で経験した「感動」からははるかに遠いものでした。うん、これならどこでもあるよね、って。
ちなみに、そのホテルには、ラッフルズのベルボーイが手配してくれたハイヤー(メータータクシーじゃないんですよ!)で向かうという、日本でもしたことがない贅沢さ。これも貧乏性の二人にはお尻がむず痒くなる所業ですが、まあ、今回くらいバブリーでもいいじゃんと互いを慰めます。でも、この運ちゃん自体はなかなか気さくな人で、そのホテルの近くにある市場を指してこんなことを言ったのです。
「これは魚市場だよ。カタール辺りからのお客にどこかうまいところはないか、と聞かれたら、俺はよくここを紹介してるよ。ここでは魚を買ってどう料理するかを指示して食べることができるんだ♪」
とのたまうではありませんか! 運ちゃんも英語がやや怪しいので、僕らの質問の趣旨を聞き間違えているかもしれないのですが、もし運ちゃんの言うことが正しければ、我々の求めているものはむしろそういうものであったわけで…。
で、(コストパフォーマンスを含めて)不満の残る夕食を終えてその周りの下町っぽいところをふらふらした後ホテルに帰ったのですが、タクシーがなかなか捕まらなかったこともあり、最近出来たばっかりでピカピカの、でも客がいなくておそらく赤字必至の(でもそんなのこの国では関係ないんでしょうね。)地下鉄に乗りホテルに戻りました。でも、この種のホテルに泊まる客なんてそもそも公共交通機関など使わないんでしょう。そういえば、チェックインのときも、「そういえばこの近くにも鉄道の駅がありますよね。それで行けば安くなるんじゃないですか?」と僕が言ったら応対していたホテルの人が「あんた、そんなのに乗るの?」って感じでびっくりしたような顔をして、「乗り換えなどもあったりして面倒なので、タクシーの方が便利ですよ。」と言ったのが印象的でした。ともあれ、全身に汗かいてホテルに戻ってくると、クーラーがしっかり効いたロビーではみんな涼しげな顔で歓談しています。豪華かつ居心地のよい部屋に戻ると、ふんだんに使い放題の真水のホットシャワーで汗を流し…。
今日に限って言えば、ドバイの印象は、どこか「伸び行く中国の最先端都市」を髣髴とさせるようなものでした。そしてふと思わずにはいられなかったこと。
「豊かさ」とは何だろう?
…この都市であと48時間ほど考えてみようと思います。
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